『霊魔伝』其の壱 木の章
《零次朗、あれを見ろ。》
「あれは何だ。」
《誰かが結界を築いている。》
見ると、宗教的な儀式が行われた跡があった。床に見たことのない丸い図形と文字が書かれており、その円周上に五つのたき火の跡があった。
《あれは霊魔を呼び出す古代の呪法。この世には出て来られない闇の霊魔を呼ぶ禁呪法だ。》
「行ってみよう。」
不思議なことにここでは霊魔たちの存在が感じられなかった。あれほどの圧力さえ感じたのに、ドアひとつを境に別世界のようだった。
《零次朗、ここは結界の中。気をつけろ。奴はどこかにいるはずだ。》
零次朗の疑問に小太郎が答えた。
《結界に入れるのは、結界の主と許された存在だけ。俺たちは迎えられている。罠かも知れない。》
「罠だとしても、この街を守らなければならない。」
階段を駆け下り、貯水槽の底を走った。水路は幅二メートル程なので飛び越した。小太郎がいう古代に呪法跡に辿り着いた。よく見るとたき火の跡には人骨らしき物が紛れている。ここで骨を焼いたのだろうか。
《零次朗、見ろ。人の骨だ。古代の呪法では五人分の人骨を焼く。それも只の人骨ではなく、特殊な呪法で殺された人骨でなくては意味がない。》
突然、零次朗の頭の中に声が響いた。
『よく来たな。おまえで最後の仕上げとなる。横にいる霊魔と一緒に、呪術を完成させる事ができる。』
低いこもった声だった。
「誰だ、おまえは。」
零次朗は周囲を見渡した。
《霊魔王となろうとしている奴だ。》
小太郎が緊張した声を発した。
『ファッ、ファッ、ファッ。』
耳障りな笑い声が響いた。五つのたき火跡に囲まれた中心が揺らめいたかと思うと、一人の男の姿が浮かび上がった。
「おまえは松尾・・・、いや錦部儒一郎。」
零次朗は国安に見せられた写真を思い出した。写真から十年はたっているのに年は若返って見える。
「あれは何だ。」
《誰かが結界を築いている。》
見ると、宗教的な儀式が行われた跡があった。床に見たことのない丸い図形と文字が書かれており、その円周上に五つのたき火の跡があった。
《あれは霊魔を呼び出す古代の呪法。この世には出て来られない闇の霊魔を呼ぶ禁呪法だ。》
「行ってみよう。」
不思議なことにここでは霊魔たちの存在が感じられなかった。あれほどの圧力さえ感じたのに、ドアひとつを境に別世界のようだった。
《零次朗、ここは結界の中。気をつけろ。奴はどこかにいるはずだ。》
零次朗の疑問に小太郎が答えた。
《結界に入れるのは、結界の主と許された存在だけ。俺たちは迎えられている。罠かも知れない。》
「罠だとしても、この街を守らなければならない。」
階段を駆け下り、貯水槽の底を走った。水路は幅二メートル程なので飛び越した。小太郎がいう古代に呪法跡に辿り着いた。よく見るとたき火の跡には人骨らしき物が紛れている。ここで骨を焼いたのだろうか。
《零次朗、見ろ。人の骨だ。古代の呪法では五人分の人骨を焼く。それも只の人骨ではなく、特殊な呪法で殺された人骨でなくては意味がない。》
突然、零次朗の頭の中に声が響いた。
『よく来たな。おまえで最後の仕上げとなる。横にいる霊魔と一緒に、呪術を完成させる事ができる。』
低いこもった声だった。
「誰だ、おまえは。」
零次朗は周囲を見渡した。
《霊魔王となろうとしている奴だ。》
小太郎が緊張した声を発した。
『ファッ、ファッ、ファッ。』
耳障りな笑い声が響いた。五つのたき火跡に囲まれた中心が揺らめいたかと思うと、一人の男の姿が浮かび上がった。
「おまえは松尾・・・、いや錦部儒一郎。」
零次朗は国安に見せられた写真を思い出した。写真から十年はたっているのに年は若返って見える。