『霊魔伝』其の壱 木の章
『ほう、俺のことを知っていたのか。ならば話は早い。説明するまでもないか。』
「何故こんな事をする。霊魔王になって何をするつもりなんだ。」
『説明する必要はない。おまえはここで最後の生け贄となるのだ。』
錦部は目を瞑り、呪文を唱え始めた。
『フユラフラト、ホーメルコアメン、トイツデガラ、フユラフラト。』
錦部の顔が変わり始めた。この世の物と思えないくらい醜い顔になり、髪の毛も真っ白に変わった。中肉中背だった身体は、ひとまわり大きくなり、着ていた洋服は裂け、身体一面にウロコのような物が浮き出てきた。そのウロコの隙間から赤黒い液体がしたたり落ちていた。
《零次朗気をつけろ。油断するな。》
小太郎が零次朗をかばうように前にでた。
「なんだ、あの姿は。小太郎、霊魔王なのか。」
《いや、まだ成りきってはいない。倒すなら霊魔王になる前に倒さなければ。》

『グァア。未だ霊気が足りん。おまえの霊気を食らってやる。』
錦部は零次朗たちに向かってきた。ものすごく大きな霊気圧を零次朗は全身に感じた。小太郎が間に入り、電撃を発した。
《オン・バサラ・サトバ・アク》
小太郎の剣が一瞬光ると、剣先から稲妻が錦部に走った。しかし、命中する寸前で、跳ね返された。
《零次朗、奴の周りには霊気の壁がある。俺の電撃は奴に届かない。》
『効かぬぞ、子供だましの電撃など。グワハハ。』
耳障りな声で、錦部があざ笑った。
「ビヤサルバ・タタラタ・センダン・マカロシャナ。手を貸してくれ炎の龍太。」
零次朗は右胸に手を当てて叫んだ。すると零次朗の右胸にある痣が龍の形に変わり、その龍が飛び出してきた。
《零次朗殿、炎の龍太参上。》

零次朗の右手には、炎揺らめく不動龍王刀が握られていた。錦部は不動龍王刀を目にすると止まった。
『おまえは九頭龍王ではないか。なぜ、ここにいる。』
《零次朗殿に封印を解いてもらい、名をもらった。今は炎の龍太だ。昔の因縁は断ち切った。》
『ほう、そいつがおまえの封印を解いたとは。俺でさえ解けなかったのに。』
< 46 / 49 >

この作品をシェア

pagetop