永遠の約束-聖母の涙-


「私の名前は――…、一応、糸川友恵(いとかわともえ)ですけど、本名は阿部友恵です。

今では、父に勘当された身なため、亡くなった母方の姓を名乗っているの」


「そ、そうなんですか……」





 優しく微笑みながら語る友恵を見つめながら、深青はハッとする。


「あっ! 

申し送れました、如月深青といいます!」


「はい…。

真理亜からは、お名前は幾度となくお聞きしてましたよ。

ですから、お会いできてとても嬉しいわ」





 微笑んだ姿は、まるで華のよう…。





 うっとりと見つめていると―――…


「あっ、そうだわ。

お姉さま、申し訳ないのだけど、深青さんも授業を欠席する旨を、頼めないかしら」


「まぁ…。

もしかして、真理亜。

深青さんを強引にお連れしたの?」





 真理亜を咎める言葉に、深青は慌てて間に入る。


「ちょっと待ってください! 

頼んだのは私です! 

真理亜さんは、何も―――…」





 慌てて間に入ったものの、二人はぽかんとした顔で深青を見てきたかと思うと、噴出した。


「まあ、冗談のつもりでしたのに―――…」





 クスクスと笑う友恵。


 そして、同じように頷きながら笑っている真理亜。


 二人の姿に、深青は首を傾げた。





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