永遠の約束-聖母の涙-


「そんな顔をしないの」


「だって―――…」


「いいことじゃないの。

私は嬉しいのよ」


「でも、本当ならこのパーティに出ることになっていたのは、お姉さまのはずなのに…」


「こら、真理亜! 

それは言わないの。

私は自分から家を出た身よ。もしかして、私のことを思って、気にしているのならお門違いなんですからね」





 二人のやり取りを見つめる深青。


 どうやら、二人の間には深青にはわかりかねない複雑な事情があるらしい。


「でも―――…」


「ほら。そんな顔をしないの。

………真理亜のためを思って用意させたドレスなのに………」





 友恵は急に指で目を拭う。


 その仕草に、真理亜は慌てて彼女に駆け寄った。





 あれは、恐らく泣き真似ね………。





 少しだけ友恵という人物がわかった深青は持ち前の観察力で、友恵のことを見破る。


 だけど、真理亜は気づかないらしく―――…


「お姉さま! 

泣かないでください。私、すごく嬉しいです! 

このドレスを着てパーティーを楽しみますから!」


「………本当?」





 弱々しい声で、ゆっくりと顔を上げる友恵。


 そんな友恵をまっすぐ見つめながら、真理亜はこくりと深く頷いた。





 あ~あ…





 深青がそう思ったのも束の間、友恵はにっこりと微笑んだ。






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