永遠の約束-聖母の涙-





 姿を表すどころか、気配さえも捉えられないことに焦りを感じていたのかもしれない。


 その焦りが今のこのまずい自分の状況を生み出していた。


「これは……、普通の陣とは違う………」





 緊迫した状況でありながらも、深青は冷静になることを心がける。


 落ち着かせるために、そっと目を閉じ、息を吐く。


 だけど、心臓は嫌な音で早鐘を打つ。


 目を閉じ、落ち着かせようとすればするほど、自分がかなり動揺していることを思い知る。





 落ち着け…。


 落ち着くのよ、私―――…。





 胸に手をあて、深青は何度も息を吐き、落ち着かせる。


 すると、頭の中がすっと冴え、今まで見えていなかったものが見えてくる。





 この陣は、どこかで見たことがある………。





 深青が主として使う陰陽道ならば、すぐにわかる。


 それに、一流の使い手である深青に陰陽道でそうやすやすと技をかけられる者もいない。


 もし、かけられたとしても、容易に深青ほどの力の持ち主なら解いてしまう。


 だけど、この陣は陰陽道とは違う。


 だからこそ、自分の勝手が許されない。


 だめ元で、深青は技を解いてみる。


「解(かい)!!!」





 人差し指と中指を顔の前に立て、念を込めて叫ぶものの、戒めが解ける気配はない。


「やっぱり、無理か―――…」





 溜息混じりに深青は肩を落とした。






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