KISS AND SAY GOOD-BYE
『そうだ、ADの山本に竹内、二人は同期入社だったな!?』
『『はい、そうです。』』
『と言うことは、ADやり始めてから、そろそろ二人とも10年になるんだよなぁ。
どうだ、今回この企画が春の新番組の枠をゲット出来たら、二人でこの企画を成功させてみないか!?
それも、二人ともディレクターとして。』
『あら、池内D.上手いこと逃げようとしてない!?』
『いやいや安西プロデューサー、滅相もない。
そろそろ二人とも昇格させてあげなきゃ!
新しいADだって5人も居るし、俺が一応統括ディレクターとして指導しながらだけど、山本だって竹内だって俺の下で10年やって来たんだから、大丈夫だろう。』
『そうすると、どちらがフロアディレクターになるの?』
『そりゃ、安西プロデューサーの使いやすい方を指名してくれて結構ですよ!』
「池内Dは、統括ディレクターをっておっしゃってましたが、統括ディレクターって事は、ロケにもご一緒して頂けるのですか?」
『桧山君、そりゃ当然だろう。
トラブルが付き物のロケに、新人ディレクターだけで行かせたとなれば、俺の首がヤバイことになっちまうよ。』
「ディレクターって大変ですね。
以前から思ってましたが、撮影中も撮影終わってからの編集作業も、ずっと忙しそうで!
以前の探せメロス!の時だって、何日も局に泊まり込みしてましたでしょ!?」
『まぁ、好きな世界で仕事が出来て、そのうえ給料まで貰ってるんだから、そんなの苦にならないさ!
それにな、俺なんかよりプロデューサーの方がもっと大変なんだぞ。』
「そうなんですか!?」
『俺達、現場のスタッフ達とスポンサーサイドの間に入って板挟みになることもシバシバ有るし、おまけに資金繰りから演者のスケジュール迄気にしないといけないんだぞ。
特に、大物の出演交渉なんて、俺には無理だよ。』
「そうなんですか。
プロデューサーって、本当に遣ることが多いんですね。」
『あら、桧山君!
あなたには、その大変なプロデューサーのアシスタントも頑張って遣って貰わなくっちゃいけないんだからね!』
「はぁ、そうでしたね。
一体、AP(アシスタント プロデューサー)って、どんなことを遣らなければいけないんですか?」
『さっき池内Dの話を聴いてたでしょ!?
あれを全て遣るのよ。
資金繰りやら、出演交渉、演者のスケジュールを押さえたり、スポンサーに媚うってお金出して貰ったりとね!』
「媚売ったりって…。」
『当然じゃない!
制作費を生み出そうと思えば、スポンサーに頭下げるしか無いじゃない。
営業マンは、スポンサーを見付けてきてはくれるけど、出資交渉迄はしてくれないからね。』
「そうですよね。」
『まぁでも、桧山君は収録日の時だけ私をサポートしてくれれば良いからね。
本当は、私の下でミッチリ仕込んで、一人前のプロデューサーに育てたいんだけどね。
そんな事したら、高山社長に怒られちゃうもんね!
それにしても残念だわ。
探せメロス!の後に手放すんじゃ無かったわ。』
本当に悔しがる安西プロデューサー。
これが縁なんだろうと思う桧山隆一であった。