KISS AND SAY GOOD-BYE
「それじゃあ、番組を収録するにあたって、予算が足らなくなりそうだって時にはどうすれば良いのですか?」
『新たに、別のスポンサーを探してきて貰うか、現存のスポンサーに予算の枠を拡げてもらうか、諦めるかの3択ね!』
「諦めるって言うのは……!?」
『要するに、予算が無いなら無い中で頑張って良い物を作るってこと!
番組のクォリティーを、予算が無いからと下げるわけにいかないからね!
ゲストの人数を減すか、セットの立込をCGで遣ってしまうとか、削れる事はとことん削って遣ったことも有るんだから。』
「凄いですね。
私の企画が通った場合、スタッフの人数がかなり多く必要になると思うのですが、そうなると必要経費も増えてしまうって事ですよね!?」
『そりゃ当然そうなるわね。
大体、最低でも1台のカメラにカメラマン1人、カメアシ(アシスタントカメラマン)1人、ADが1人に照明が1人、音声が1人の5人が必要だからね。
最低でも!
もしカメラが2台なら10人、4台なら20人のスタッフが動くってことよ。』
「凄いですね。
でも、探せメロス!の時にはカメラが3台でしたけど、そんなにスタッフいませんでしたね。」
『そりゃ、照明も音声も、アイドル1人だけに向いてれば良いわけだから、少人数で出来ちゃうわけよ。
ただ、あの当時は新米ADが使いもんにならなくて、直ぐにダウンしちゃうから、大変だったのよ。
あのボード持って1日中、ご飯も食べないで担いでいたら腕や肩が痛くなったでしょ!?』
「ハハハ…。
そうでしたか!
私は、極真空手で鍛えてましたので、あれくらいのボードは問題なかったですよ。
それよりも、あの横柄なアイドルに対しては堪らなく嫌な気分にさせられましたけど。」
『それにしては、良い笑顔でジュースやオシボリを渡してたじゃない!』
「そりゃ当然ですよ。
一応、演者なんですから、気分良く働いて貰えれば、此方への風当たりも少なくて済みますからね。
こっちが嫌な顔をしたとたんに、文句タラタラ言われて、オシボリぶつけられて、挙げ句の果てに、もう歩きたく無いだの、疲れたから帰らせだのと大変だったんですから。」
『我が儘アイドルには相当苦労したみたいね。
でも、それで良いのよ。
彼女達が動くから、私達のお給料も発生してくるんですから。
上手になだめて、すかして、おだてて誉めて頑張って貰うようにするのもAPの仕事の一部だからね。』
「はい、分かりました。」
『それから、この企画提案書だけど、やっぱり新星MUSICからの持ち込み企画として、制作部長に掛け合ってあげるわ!
私の名前で通すのはおこがましいわよね。
こんなに良くできた企画を高校生が書いてくるとはねぇ~。
あなた達も、上を目指すならこれくらいの企画は考えてきなさいよ。
私も反省よ。
めっきり頭が堅くなって、柔軟な発想力が、てんで出てこないんだから。
それじゃあ、今日はこれまで!
各々、スケジュール調整宜しくね!
池内D、貴方はこれから私と一緒に坂巻制作部長のところに行きますから。
桧山君、ご苦労様。
それじゃあ、決まったら連絡するからね。』
それぞれに指示を出したりしながら、安西プロデューサーは池内ディレクターと共に坂巻制作部長のところに行ってしまった。
俺は、会議室を後にしてエレベーターで1階に降りた。
通行証を返却して、ノートに退社時間を記入してから、地下駐車場に降りて愛車のセイバーに乗り込み、新星MUSIC日本支社へと戻っていった。