となりの女の子
ある日の下校途中、こんなことがあった。

それは、部活を終えた寛太が友達の菊地と歩いていた時のこと―


「寛太、おまえは余裕でイーよなぁ。俺なんか1年に負けたらマジへこむわぁ。」

「大丈夫だろ…今のところ。」

「つーか、この革命の発端は、おまえからだって分かってる?だから1年坊主が、レギュラー獲得にメラメラと闘志燃やして」

「知らねーよ!顧問に文句言えっつーの。俺だってピッチャーの夢、奪われてんだ。」

「あれれ?“守備も楽しいって事が分かったよ”とか言ってたじゃん。」

「そーだけど…」

「しかし大竹はついてるよなぁ。棚ぼたっつーの?お陰でアイツがエースだろ?速い球投げるおまえの方が交代要員ってどーゆーことだよ!だいたい遠投が苦手って…克服しろっつーの!」

「人のことより自分が頑張れよ。」

「…」

「…ん?噂をすれば大竹だ。…何やってんだ?」


寛太と菊地の前に現れた大竹は、電信柱に抱きついているように見え、

「なんだ?うちのエースは何してんだ?」

いけないモノを見てしまったかのように立ち止まる二人。


「どうする?」

「見なかったコトにするか?」

「だな。」

と、引き返そうと背を向け歩きだしたところに、

「あ、おい、寛太。」

向こうから、潜めた声で呼び止められ…

顔を合わせた二人は軽く頷きあってから、何も知らないフリをして大竹の方へと振り返った。

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