となりの女の子
玄関を出てスーパーマーケットの方向に歩くと隣の家の小さな庭に人影があった。

葵だ。

座り込んで何かをしているようだが、ソレを横目に通り過ぎた。

幼児相手に声をかける気分ではなかったのだから仕方ない。


スーパーマーケットは中学校の少し手前にある。

だから、午前中の部活動を終えた生徒の姿が目にはいってくる。

そこには、気付かぬフリして目を逸らして歩く自分がいた。


“クソっ。わざとこっちに買いに来させたろ。これじゃ野球部は負けたって言わんばっかりじゃんか。”

こんなにも自意識過剰になったことは、寛太の人生で初めてだ。


そして、逃げるようにスーパーに駆け込むと、一目散に飲み物の陳列棚へと向う。


特に強制させられていたワケではないのだが、日頃から炭酸ドリンクを飲まないようにしていた寛太は、迷うことなくメジャーな赤いラベルを手にしていた。


そして帰り道、レジ袋を持っているかいないかだけで、来た道を堂々と歩けるものだった。


“やだやだ。俺ってちーせーなぁ…”


そうもしているうちに自分の家が見えてきて…
やっと、隣りの家へと差し掛かかった時、その小さな庭には、さっきと全く同じ光景があった。


「おい、あお?」

「…あ、かんかん。」


そしてなんとなく、葵の様子がいつもと違う気がした。

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