となりの女の子
庭にしゃがみ込んだ葵は、砂遊びセットのバケツに水を張り、人形などのおもちゃを浮かばせていた。


「何それ?洗ってるのか?」

「プール。」

「あぁ〜、人形に水浴びさせてやってんだな。気持ち良よさそうだなぁソレ。」

「…」

「なんだ?さすがに飽きたか?」

「おもんくないもん。」

「なんで?楽しそうじゃん。」

「バケツだもん。」

「…もっとデッカイの無かったのか?」

「…」

「なんだよ。どうした?」

「ママがおなか痛いんだから。」

「え?…寝てんの?」

「うん。」

「パパは?」

「お仕事。」

「そっか…病院は?」

「行ったの。でも、まだなんだって。」

「待ってろ。怜子おばちゃん呼んで来るからな。」


寛太は慌てて家に戻り、

「お母さん!」

玄関先から大声を張り上げるのだった。


「何をそんなに大きな声で」

「ちひろさんがハライタで寝込んでるって!」

「えぇ?!」


詳細も聞かずに家を飛び出す怜子。


どうやら怜子は、藤原家の秘密を知っているようだった。

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