となりの女の子
「んだよ〜、マジ焦ったよ。」

「ごめんごめん。安定期に入るまではそっとしておこうと思ってね。」


葵の母ちひろのお腹の中に、新しい命が宿っていた。

日沼家のリビングでゲームをピコピコいじっている葵も理解しているようだ。


「つわりってそんなキツいの?」

「個人差あるの。お母さんだって大変だった…」

「恩着せがましいっつーの。」

「ホントのことだもん。」

「…深刻だな。」


キッチンから葵を眺めながら語る怜子と寛太。


「あーちゃんは納得がいかないのよねーきっと。」

「どっかに行く約束してたんだってよ。…望んでない兄弟のせいで母親が具合悪くて中止じゃなぁ…」

「嫌な言い方するねーあんた。」

「いやいやいや、あおが言ってたんだって!」

「不安なのよ。これから先、生まれてくる弟か妹のために我慢しなきゃならないことができるワケだからね。」

「…兄弟って歳が違うと大変なんだなぁ。」

「双子に生んでもらって感謝?」

「は?それはそれで色々あるんすけど。」

「そんなの、どこの兄弟にも色々あるわよ。少なくとも私は感謝してるわよぉ。こーして話し相手になってくれる息子が居ることにね。」

「気持ちわるっ!」

「あれ?照れてる?」

「は?馬鹿じゃねーの!?あお、そのゲーム、こーやるんだよ。貸してみ。」


そう言いながらソファーに向うと葵からコントローラを奪い隣りに座って手本を見せる寛太。

そんな様子を見て

「寛太が暇だったのよー。相手してくれてありがとね、あーちゃん。」

「うん!」

「ちぇっ、」

ホッとする怜子だった。
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