青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「犯人探しをするしかないのか…。だけど、そうこうしている内にも楠本の振る舞いはエスカレートしていく一方だ」
「そいはがとかっちいるけん、蓮。ばってん犯人ん一件ば差し置いて行動しゅるなんていまりにも危険とよ。
(それは分かっているんだよ、蓮。だけど犯人の一件を差し置いて行動するなんてあまりにも危険だ)」
涼さんの意見に、「それも分かってるんだよ」だけど過激化している楠本を見過ごすことはできない、蓮さんは台詞に焦燥感を含せて反論。
「そげんゆーても」犯人の一件は見過ごせないだろ、と涼さん。
「だから」このままじゃ楠本にヤラれていく一方だ、と蓮さん。
なんだか分からないけど口論になりそうだったから、やんわりハジメが二人の間に割って入った。
「優先順位を付けるべきだと思うね。どんな行動を起こしても、必ずリスクというものが浮上してくる。多大なリスクを背負って勝利を掴むか、それとも最小限のリスクで地道に勝利を掴むか、これからの行動がすべてに物を言う状況さ。
僕としては最小限のリスクで地道に勝利を掴んだ方がいいとは思うけれど…、喧嘩は長引こと間違いなしだよね」
「ふぁ~…、ハジメ…、自分はその意見に反対だ。長引かせる喧嘩は…、双方チームにとって不得意なこと…、極まりない」
長引かせるイコール、考えて動かなければならない。
なにせ頭が頭脳派ではない、地道なんて深慮な行動がリーダーにできるわけがない。
一々台詞に棘を含ませるシズだけど、ヨウは眉根をつり上げているけど、ご尤も。
両者瞬発力のあるチームだ。
持久戦は不得意も不得意、長引かせるのは不味い。
あーだこーだ話し合っているうちに手詰まりを感じてきた俺達は、ホトホト困り果てていた。
どうする、どうすれば、この事態を……。
ふと隣室からどよめきが聞こえた。
なにやら不良達の声々。
タコ沢やキヨタの喚き声じゃない。
驚き慌てふためいている騒々しい声が無数に聞こえる。
何事だと俺達が視線を投げた矢先、扉が開かれた。絶句。だってそこに現れたのは自宅に帰った筈の重傷者。
ドア枠に寄りかかりヘラヘラと笑って、「おっす」心配掛けたな、今戻ったと能天気に片手を挙げてくる。
「か、か、和彦さんっ?! な、なんで此処に!」
蓮さんの素っ頓狂な声に、「なんでって」頭に包帯を巻いた浅倉さんは大袈裟に肩を竦めてみせた。