青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
裏切り者は裏切り者らしく“自分達”と共に彷徨していればいいものを、敢えて仲間に戻るなんて。
「素知らぬ顔で、またお仲間ごっこ。虫唾が走るんだよ!」
鼻につく奴だと怒号を上げ、渾身の力を込めて蹴り飛ばしてくる。
元々無傷だった楠本に対し、蓮はそれなりにダメージを受けていた。
ハンデあっての喧嘩は、どちらが優位に立っているのか誰が見ても分かる。
派手に転倒した蓮だが、すぐに右に寝返りを打って馬乗りになろうとしてくる楠本の手から逃れた。
ギッと此方を睨んでくる楠本の左フックを避け、蓮は片手の凶器を遠ざけるために相手の右手を蹴り上げた。
宙を舞うスタンガンは、降り注ぐ雨粒と共に楠本側に滑り転がる。
それでも相手の顔色は憎悪を滲ませたまま。
一色も変えることなく、蓮の胸倉を掴むと勢いのまま押し倒した。
背中から打ちつけ、数秒の間呼吸の仕方を忘れる蓮に構わず、その胸倉を締め上げて呼吸を止めにかかる。
(こいつ…、本気で俺を殺すつもりか。くそっ、恐ろしい凶暴野良不良だっ)
榊原も厄介な野良を手懐けたもの。そこは敬意に値する。
蓮は息苦しさに悶えつつ、どうにか力を振り絞って持ち前の脚力を相手の腹部に決めた。
軽く呻いて尻餅をつく、楠本から今度こそ距離を置き、蓮は肩を上下に動かした。
肺に酸素が入るたびに、痛みを感じる。
ということは軽く三途の川に向かっていたのかもしれない。
本当に楠本は容赦という二文字を知らない奴だ。
ひゅうっと喉を鳴らして呼吸を整える蓮は、ゆっくりと上体を起こして楠本を瞳に捉える。
そして濡れた唇を動かして、凶暴野良に告げた。
「此処で終わらせてやる。お前の暴走、俺が終わらせてやる。お前を野放しにしている限りっ、チームは傍迷惑な怪我ばっか負っちまう。
いいか、楠本っ。俺はお前の復讐劇に付き合うほどお人好しじゃないんだよ。
裏切った? ああ裏切ったさ。
俺は両チームを裏切って、元の鞘に収まっている。
自分が可愛いからな、適した居場所が欲しいんだよ。
そしてお前は和彦さんや仲間を傷付けたっ…、俺の居場所を壊そうとした。だからどんな手を使っても終わらせてやる」