青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
結局、とんぼ返りしちまった俺達はシズの住んでいた部屋にもっぺんお邪魔します。
大慌てで部屋を飛び出した形跡が見事に残っていて、玄関に並べられていたシズのローファーも、踵の潰れたスニーカーもバラバラに転がっている。
どんだけ俺達、焦っていたんだろ。
ん?
待てよ、一足はシズのローファーだろ?
だったらもう一足は?
やっぱシズのか?
疑念を抱きながら薄暗い居間を通り過ぎ、さっきシズが転げ落ちてきた襖のある部屋へ。
「おっし」
これでもうテメェは逃げられない、無造作にシズを畳に下ろしたヨウはさっさと部屋の襖を閉めて戻って来た。
その場で胡坐を掻いているシズは、いつもの調子に戻ったらしく、小さな溜息をついて物思いに耽っている。
で、早速疑問をぶつけてきた。
「自分は…、そこの押し入れで…、寝ていた筈なのに……、お前等か? あれ」
枠に戻されていない押入れの襖を指差してくるシズに、俺達はピンポンですと白状。
不法侵入した上に開かずの間と化している襖を抉じ開けようとして、ああいう結果になりました。おかげでシズを見つけ出すことに成功したんだけどな。
てか、寝てたのかよお前。
落ちたにも関わらず目を覚まさなかったってことは、相当深い眠りについていたのか?
それとも起きられないほどの疲労が体内で蓄積されていたのか?
なんでそこに寝ていたのか、俺が相手に聞くと、シズは大家にばれたら追い出されるからな、と返答。
「…寝る場所…、なくてな。押入れ…隠れていたんだ」
そう、今の自分には寝る場所がない。帰る場所も、家も、何もかも。
あっけらん顔で話し始めるシズは、腰を上げて自分の寝ていた押入れに上半身を突っ込むと奥からズルズルとスポーツバック。
それに通学鞄を引きずり出す。
まるで家で少年のような、大層な荷物に出俺達は目を見開く。
「親は」引っ越したんだ、どうでもいいけれど、シズは投げやりに肩を竦めて自分には関係ないことだと鼻を鳴らした。
関係ないってどういうことだ?
目を見開く俺達に、「引っ越したらしい」繰り返し告げるシズは、他人事のように親は引っ越したらしい、と教えてくれる。
おかげで自分は路頭に迷ってしまった、どうしよう、何でもないようにシズは笑声を漏らした。
「家は嫌いだった…。だが…、寝る場所があった…、家がなくなると困るな」
―――…。
シズ、それって。