青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「今。親戚の家…、めぐり…をしている最中なんだ。誰も…、置いてくれる奴はいないが」
曰く、きっかけは愛人関係からだったらしい。
シズのお母さんと愛人さんの関係がお父さんにバレたそうな。
お母さんとは不仲だった筈なんだけれど、お父さんは愛人まで作っているとは思わなかったらしい。
愛人を作るイコール、負け星でもついたと思ったのかもしれない。
愛人を作っていたことに腹を立て、怒りを暴力に変え、ついに離婚すると話を切り出したとか。
飛び火はシズにまで行き、母親と愛人の関係の黙認に対して激しく責め立てられたらしい。
暴力を返したら面倒になると知っていたから、シズは何もしなかったと語る。
自分が暴力を振るわれている間、お母さんはお父さんの持ってきた離婚届に名前を書いて愛人とトンズラ。
お父さんもシズが外に出ている間に、さっさと家の解約手続きをして引っ越してしまったらしい。
一週間くらい前の話だとシズは教えてくれる。
それでもヒトリじゃ生きていけないと知っているから、シズはプライドも何もかなぐり捨てて、居場所を掴んだお父さんの方にこれからどうすればいいのか、自分はどうして行けばいいのか、聞いたらしい。
お父さんとはまったく血が繋がっていないために、「親権は向こうにある」出て行けと殴り飛ばされたとか。
その時できた怪我が頬の青痣だ。
一応お母さんとは連絡がついているみたいなんだけど、愛人がどうしても子供は傍に置きたくないと言ったらしく、「学費は仕送るから」置いてもらえる家を巡ってみて、と住所と手帳を手渡されたとか。
子供より愛人をお母さんは取ったんだ。
そんなのありかよ、俺もヨウも怒りを感じるけど、シズは平坦な声で子供は荷が重かったのかもな、と肩を竦める。
「取り合えず…、寝る場所がほしかった。金は、あまり使いたくなかったし。鍵は持っていたから…、此処に厄介になっていた。
大家に、バレたら…、怖いから、押入れの中で寝ていたんだ。驚かせて、悪かったな。こっちも…、驚いたんだが」
どうして俺達に頼らなかったんだろう。
いつもどおりたむろ場に来れば、泊めてくれと言えば、すぐに泊めたのに話を聞いてやったのに。
けど俺は何となくシズの気持ちも理解できた。
迷惑を掛けたくなったと同時に、気持ち的に人に会いたくなかったんだ。
だって実質上シズは親に、親に、おやに。