青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「凄いなぁ」あの荒川庸一に堂々と喧嘩売るなんて、ハジメは感心していたけど、ワタルさんや弥生は同調していたけど、いやいやいや誰か暴走しているこいつ等を止めてやってくれ。

俺はやだぞ、面倒な役を承るのは。


はぁっ…、溜息をついていると長い唸り声を上げて握り拳を作るキヨタの姿に気付く。

ググッと握り拳を作ってブルブルと体を震わし始めるキヨタに、

「ど。どうした?」

声を掛ければ、


「クーヤーシーイー!」


絶叫する我が弟。
地団太を踏んで、自分や兄分のことを侮辱したことに憤っていた。

「ちょぉおお悔しいっスっ!
なんっスかあいつ等っ、人の兄貴をあーだこーだっ…、しかも弟分がどうたらこうたらっ。舎弟も弟分も大差ないっつーのっ…、くそっ、クソォオオ!」

「き。キヨタさん。悔しいのは分かるけど」


「ケイさんは悔しくないんっスか! あっそこまで馬鹿にされて!」


えー、そこで俺に飛び火?

「そりゃあ」馬鹿にされて腹立たしいとは思うけど、口ごもる俺は、すぐに笑みを浮かべて返答。


「あの程度なら可愛いもんだって。そう、毒舌の波子に比べればゼーンゼン! パシリのパシ? 可愛いもんじゃんかよっ、ヘボ山に比べればな!
あっはっはっはっ、思い出しただけで腹立ってきたんだぜ! あぁああんの畜生女っ!」


「あ…あぁ…すんませんっス。なんかヤーな思い出を蒸し返したようで」

「いいんだってキヨタ。まあさ、あいつ等の言うことなんて気にするな。俺がパシリっぽく見えるって言われるの、今に始まったことじゃないし」

「なんか、悔しいっスよ。それ…、あいつ等だけじゃなくて周囲の奴等もケイさんの悪口ばっかっス」

「んー。確かに気になっているけど、俺がどう言っても向こうの俺に対するイメージって変えられないしな。あんま気にしないようにしてるよ」
 

お前も慕ってくれているし、周りの悪口は気にしないようするから。

ポンッとキヨタの頭に手を置く。口をへの字に曲げているキヨタは納得していない面持ちで、いつまでも唸り声を上げていた。

ったく、お前ってほんっと損する性格だぞ?
俺なんかを慕っちまってさ。

俺のために真剣に怒ってさ。

おかげで俺、お前のこと、超可愛い弟分だって思っちまうじゃんか。
 

「くそっ、俺のかけうどん」


ヨウはまだかけうどんで恨み節を唱えているらしい。

だよな。

金払ったっていうのに、お前のうどん、真っ赤っかだもんな。

勇者じゃない限り、それを食そうなんて思わないよな。


しょーがない、俺の弁当はヨウにやるか。

ついでに矢島との一騒動のせいで一部始終、視線を浴びることになったけど、それについてはすべて無視することにしておこう。


うん、一々気にしていたらやってらんねぇもんな。
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