青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「わたしがとろいものだから、自分から率先して動いてくれているの。元ちゃん、一緒にいる時も面倒見がいいでしょう?」
まあ、否定はできない。
なんだかんだでタコ沢は、俺達チームに属しているし、手だって貸してくれる。
チームメートを見ていないようで見ている奴だから、俺が落ち込んでいた時は背中を蹴って前に進ませてくれたっけ。
美雪さんの言うとおり、面倒見はいい。
今じゃチームになくてはならない存在だしさ。
ま、俺とヨウには雪辱を晴らすために度々喧嘩を売ってくるけど。
そのしつこさと根性は飛び抜けているけど。
「そういえば元ちゃん、どうしてタコ沢なの?」
可愛いあだ名だと美雪さんが可笑しそうに頬を崩す。
それは話せば長くなるけど、元凶は俺です。
俺、田山にあります。
手短に話せば俺が弁当を投げつけたせいです。はい。
でもでもあだ名をつけたのはあくまでヨウです。
俺のせいだけど、俺のせいじゃないんです。はい。
「タコ沢かぁ。生き物の名前が入ると和むなぁ」
わたしも呼んでみようかな。
美雪さんは大層あだ名を気に入ったらしく、冷凍売り場に戻って来るタコ沢に手を振って、「タコちゃーん」と一声。
ガッチン固まったタコ沢はコンマ単位で息を吹き返すと急いで美雪さんの下に走った。
んでもって、そのあだ名はやめろと相手を睨み鼻息を荒くする。
どうして?
可愛いじゃないかと美雪さんは首を傾げ、やや間を置くと、分かったとばかりに手を叩いた。
「元ちゃんってあだ名も好きなのね。そうよね、わたしが元ちゃんって呼ばなくなると、誰も呼ばなくなるだろうし。わたしは元ちゃんのままにしておくわ。元ちゃんも可愛いもの」
「~~~ッ美雪…、どーして貴様は手前の都合のいい解釈しかしねぇんだゴラァ」
握り拳を作って青筋を一つ立てるタコ沢に、調子ノリの影響を受けているリーダーがついつい出しゃばった。
「大丈夫だってタコ沢。仮に呼ばれなくなったら、元ちゃんのあだ名は俺達が引き継いでやる」
「だぁあっ、荒川! 貴様っ、楽しんでやがるだろ!」
「イエイエ、オトモダチとしての心配りをしたマデデスヨ。ゲンチャン」