必死こいて桜姫やってやんよ!
「―…ようこそぉ音寧々ちゃん」
「鳴海」
「分かってるって〜。
おいで音寧々ちゃん、湿布貼ってあげる」
左手首に若干残っている手の痕。
どんだけ強く握ったんだコイツ。
ヒヤッとしたその部分を見ると鳴海が丁寧に湿布を貼ってくれていた。
「…さんきゅ」
「んーん〜。
こっちこそごめんねぇ〜」
コイツ握力凄いから。
そう言って彼はチラッと黒髪のアイツを見た。
黒髪に、少し色素の抜けた茶色の目。
細身のパンツにニットを着ただけのアイツ。
「…、鳴海」
「ん〜?」
「何で?」
たった3文字に、全ての意味を込めて。
鳴海もアイツもバカじゃないから意味は分かってるはず。
「…ごめんね」
パーマのかかった長めの茶色の髪を耳にかけながら。
「謝って欲しいワケじゃない」
「それでも、ごめんね」
窓の外は人工的な光が沢山落ちていて、その上にはその明るさで暗いとは言えない夜の空があった。
おかしいな、暗くないのに…
はは、真っ暗。