俺はお前だけの王子さま~ヒロキと加奈子~
親父が寝てくれてたほうが何かと都合がいいんだけど。


下手にこれ以上確認して逆に起きたら嫌だし



俺はゆっくりと歩き出そうとした。


その時


「ヒロキ」


寝室の中から親父の声がした。


「……!」


思わずギクリとした俺は歩きかけた足を止めた。


「ヒロキ、いるんだろ?」


また親父の声がする。


完全バレてるし…


「…………」


俺は観念したように、ゆっくりと親父の寝室の扉を開けた。


「ん、なに?」


半分開けた状態で入口にもたれるようにして親父を見る。


ベッドサイドだけ明かりが灯った静かで薄暗い親父の寝室。


布団をかけてベッドに寝ている親父の顔は俺からは見えなかった。


「いや、おやすみ」


「……は?」


それだけ?


俺は思わず間抜けな声を出してしまった。


「あー…えっと、おやすみ」


俺は濡れた髪をかきながらそう言うと寝室を出ようとした。


親父のベッドがもぞもぞ動き、寝返りを打つのが見える。


「俺は今から寝るが、もう遅いからあまり騒ぐなよ」


親父は静かに、だけどはっきりとそう言った。


わざわざ自分が寝ることを強調して言う親父。


もしかして


親父なりに俺に気を使ってくれてんのか?


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