ONLOOKER Ⅱ

 *

「きゃあー!」


里吉の楽しげな悲鳴が、夏生のちょうど耳の後ろあたりで上がる。
完成度の低い吸血鬼人形は、上から飛び出して、ぶらりと揺れてから、また引っ込んでいった。

金切り声に咄嗟に顔を逸らした夏生は、片方の眉を歪めながら、斜め後ろを振り返った。
それに気づいた里吉が、口許だけで笑う。


「怖いというより面白いんですのねえ。私、こんなのはじめて入りましたわ!」
「……そう」


こんなの、というのはつまり、こんなにチープなお化け屋敷、という意味だろう。

蜘蛛の巣の奥で青白く光る顔は液晶モニターに表示されたものだし、出てくるお化けはといえば、上から飛び出す、横から飛び出す、斜め前から飛び出す、とにかく飛び出してばかりだ。
恐怖よりは驚きを狙った安い演出なのだろう。

しかもさっき引っ込んだ吸血鬼の他は、口裂け女に皮膚の爛れたブタを連れたゾンビ、白い着物の女、フランケンシュタイン、鎌男に一つ目女。

多国籍、まるで統一性がない。
確か、外には『恐怖の館』なんてありがちな看板と共に、国旗が幾つも描かれていたような気もする。

こういう意味か、と溜め息を吐いて、夏生は前を向いた。
目の前ではちょうど、目玉の飛び出した人形が額縁の中でぱっとライトアップされたところだった。

 *

< 111 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop