ONLOOKER Ⅱ


『もーっしもーし。こちら柏木くん』
「こちらいのさん、対象は恐らくお化け屋敷に入ったもよう」
『お化け屋敷? おけ、追跡します』


そうとだけ言って、聖は電話を切ろうとしたらしく、声が少し遠くなった。
だが直後、慌てたような声が聞こえてくる。


『えっ真琴、えっ? なに、』
『え? 入りたくないの?』
『なん……ええ、そんなにイヤ?』


恋宵と顔を見合わせて、思わず携帯電話に視線を落とす。
そこを見ていたからといって電話越しの情景が見えるわけではないのに、数秒間見つめてしまってから、直姫は「あ」と声を上げた。


「真琴、怖いのだめなんだった」
「にゃに? 嫌いなの?」
「ホラー映画とかも無理って言ってましたもん」
「え? でも去年の春のに出てたじゃにゃい、めっちょスプラッタホラー」
「演じるのは大丈夫だそうです」
「ええー……?」


怪訝と戸惑いが半分ずつ混ざったような表情を浮かべながら、恋宵はぐるりと首を傾げた。
そして、電話に向かって呼び掛ける。


「ねぇねぇ柏木くん?」
『はい柏木くんですっ』
「嫌いなもの無理強いはいくないにょ。うーん、しょうがにゃいから……ひじりん一人で行ってきて?」
『えっ! 一人!? お化け屋敷に!?』
「だってまこちゃん可哀想じゃにゃい?」


聖は「う」とか「えー」とか「えええええぇ……」なんて、しばらく意味のない音を発していた。
そして葛藤の末、渋々、といった感じで「……はい……」と呟く。

ほどなくして直姫の視界には、人目を気にしながら一人でお化け屋敷に入っていく、なんとも挙動不審なサングラスの男の姿が映ったのだった。

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