ONLOOKER Ⅱ
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混乱する意識で、真琴は隣を見た。
カスタードプリンのカラメルソースのような髪が、きょろきょろと動いている。
観察するように辺りを見回している彼に、小声で話しかける。
「……あの、准乃介先輩」
「ん、なにー?」
「これってどういうことだと思います……?」
「どういうことって……やっぱ、こういうことだろうねぇ」
「やっぱり、そういうことでしょうか」
こういうことだとかそういうことだとか、ひどく抽象的な会話に、もはや自分が何を言っているのかすらわからなくなりそうだった。
けれど具体的には何とも言いづらくて、結局そんなふうに濁してしまう。
しかし、もし真琴の言う“そういうこと”が准乃介の言う“こういうこと”ならば、この一連の出来事は一体、なんのためだったのか。
もしかして、まったくなんにも意味のないことだったのではないか。
隣で曖昧に首を傾げる彼を、とても心配していたあの人が、無鉄砲な行動を取らなければいいのだけど。
夏生が彼女をビルの外に残したのは、きっと、そんな事態を避けるためだったのだ。
(それよりも、やっぱり彼女のあの取り乱しようを見ると、二人がそういう親しい関係にあると周りに思われたって仕方ないと、思うんだけど。)
そう考えて真琴は、辺りを見回した。
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