それはたった一瞬の、


「どうかなさいましたか?」

よもぎちゃんが無駄のない綺麗な動作でご飯を食べながら、質問してくる。

頭の中でたくさんの言い訳や返事を考えたけれど、うまくかみ合いそうな解答はひとつも見つからなかった。


「ううん、何でもないよ」

何を言っても白々しくなってしまいそうで、でも無視はできないからそれだけを言って料理に夢中な様子を見せる。


真っ白で一粒一粒が存在を主張するような白米、日常では決して見ることのない船盛りのお刺身、透明でお椀の底がしっかり見えるお吸い物。


噛みしめるたび込み上げてくるものを抑えつけるのに精一杯で、なかなか食べ終わることができなかった。


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