それはたった一瞬の、


取り残された釧奈が、捨てられた子犬のようにしょんぼりと肩を落とす。

「釧奈、大丈夫ですか?」

「…うん、平気かもぉ」

その口調も弱々しい。

さっきの話からすると沙霧って…。


「沙霧って、体弱いの?」

言ってから、しまったと口を押さえる。

ついさっき八つ当たりして自己嫌悪に陥ったばかりなのに。


うろたえる私に、釧奈は目尻を下げて笑った。

「そうだよ。だから、誰かが側に付いてないとダメなの」

そんなに悪い病気なのか。
もっと聞きたい気持ちを抑えて、私は小さく首を振る。


< 41 / 228 >

この作品をシェア

pagetop