シャボンの国 -the land of soap bubbles-
空を飛んでいるという現状よりも、その温もりに包まれているという現状の方が花音の頭を埋め尽くす。




こんなに密着したのなんて初めてだった。




いや、それよりも。




誰かにこんな風に抱きしめられた事も花音にとっては遠い昔の思い出だった。




父も母も。




生きて笑っていた時はこうして抱きしめていてくれた気がするのに。




思い出そうとしてもそれはもう遠い昔の事で、その温もりがどんなだったかなんて思い出せる事は無い。




今自分をこうして包んでくれる体温と同じ様に、温かくて心地良いものだったのだろうか。
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