シャボンの国 -the land of soap bubbles-
「前に、夜探検してる時に何回かこうやって下眺めてたんだ。特別に花音にも見せてやろうと思って」




きっとカイルは何もわかってはいない。



「特別」なんて言葉を使われてしまう事が花音にとってどんな影響をもたらすのかなど。



今の花音にとって、カイルの一挙一動はカイル自身をこの世界にとどめてしまう枷となってしまうのに。





「ありがとう、カイル」





心の中で「ごめんね」と呟いて、それでも花音はカイルに礼を告げた。





「今度は晴れてる日に見に来ような」




ふいに見せた優しすぎる笑顔が花音の目を捕らえて離さない。




きっと、そうなってしまうのはカイルが美しすぎるから。




心臓が速くなってしまうのも。




顔が熱くなってしまうのも。




全部全部カイルがあまりに美しい所為だ。
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