Color
何故そう思ったのかはわからないけれど。
「……やっぱり、お祖母様の簪(かんざし)を頂けますか」
それは、年に一度くらいしかお祖母様が付けていない簪。
いつも大切にしているのがわかっていた。
漆黒に椿の花が添えられている簪。
「あれはね、主人がくれたものなんだよ。いつかは黄衣子にと思っていたから、誕生日に黄衣子に付けてもらおうか」
にっこりと微笑むお祖母様の表情に、私の頬も自然と緩んだ。
「さて、そうしたらちょっと循環させようかね」
…循環。
一族に連絡を取って困っていることや、体調を崩していないかなどを聞くことをお祖母様はそう呼んでいた。
「…黒介かい?ったく、碧の奴はまた夜遅く出掛けているんだよ。お前にそっくりだ。それより、夏にはこっちに来るだろうね?」
部屋に置いてある電話で碧の父親である黒介おじさんと連絡を取っている。
私にも聞こえる電話の向こうの声が笑い声なのがわかった。
私は邪魔をしないようにそっとお祖母様の部屋を出た。
ぺたぺたと足の裏から広がる廊下を歩く音。
お父さんはまだ病院で仕事をしているし、お母さんもきっと忙しい。
碧はどっかの友達と遊びほうけている。
私は自分の部屋にあるパソコンのスイッチを押す。
起動している音をただぼーっと聞きながら、オンラインゲームのアイコンをクリックした。