恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「悠真」


小走りで追いつき、悠真の横を歩く。


「じゃあ、好きな人は? いないの?」


「おーらーん」


「もったいない。悠真、普通にモテそうなのにね」


明るくつとめて言ったあたしに悠真が返して来たのは呪文のような、おまじないのような言葉だった。


「わんやたーぬくとぅもしちゅんかいならねーらん。だぁんかい……たーかをしちゅんかいなってうーけねーらん。ちょぎりーさ、ターん失いたこーねーんやっさー」


その時悠真が言ったことの意味なんて、沖縄の方言をまだよく理解できていなかったあたしには分からなかった。


「……なに?」


どんなに考えてみても、


「ねえ」


やっぱり悠真の言ったことの意味は分からなかったけど。


「今、何て言ったの?」


でも。


何か。


切ない事を、彼は言ったのではないかと。


なんとなく。


そう思った。


「……秘密、さ」


そう言って苦笑いした悠真に、それ以上深く突っ込む気にはなれなかった。


「じゃあ、もう聞かない」


「そうかね」


その時悠真が見せた表情はとても曖昧なもので、目を反らすことができないくらい、印象的な横顔だった。


「でも、すごく綺麗だね。そのピアス。すっごく綺麗な赤い色だね。悠真」


「そうかね。ありがとうね、陽妃」


とても寂しそうで、今にも泣きだしそうな横顔を悠真はしている。


「別に……本当に綺麗だと思っただけだし」


「そうかね」


並んで歩きながら、


「うん」


空を見上げ、あたしはゆっくりと目を細めた。


なんか。


きついな。


真夏の陽射しって。











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