恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「石垣島のマースジェラートだしよ」


「マース?」


首を傾げたあたしの耳に悠真が「マースは塩のことやんど」と呟く。


「塩! 何、じゃあ、しょっぱいの?」


ぎゃんぎゃん声を出したあたしを悠真は「かしましい」とひややかな目で見る。


「かめーみるといいさ」


かめーとは食べろという意味らしい。


「食べてみろってさ」


悠真が教えてくれた。


「……うん。じゃあ、それください」


結局あたしは石垣島のマースジェラートで、


「にぃにぃはいつものでいいかね」


「いー」


悠真は時々学校帰りに買って食べているというグレープフルーツのジェラートを頼んで、店の前の古ぼけたベンチに座って食べることにした。


「え! 衝撃。うまーい」


マースジェラートはほんのり塩味でさっぱりとした甘さで、濃厚なミルク味なのにびっくりするくらい爽やかだった。


「すっごいおいしいよ、これ」


「そうかね」


「うん」


けど。


「悠真のグレープフルーツのやつもおいしそう」


「陽妃やくいしんぼうやさ。かめーみるみ?」


ほら、と悠真が自分のカップを差し出す。


「いいの?」


「ひとくちやっさー。全部はやらんよ」


「分かってるよ。ケチ」


と言いながらもスプーンでふたくち分大をすくって口へ運んだ。


「……うんまー!」


「やっさーろ!」


東京に居た頃、学校の近くに何件か有名なジェラート屋さんがあって、帰りによく食べたっけ。
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