恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
その小規模な発光の眩しさに、とっさに目を細める。


「もう……言わんからさ。ひとりで帰るなんて言わないでよ」


悠真ってよく見ると……。


「一緒に、けーろう(帰ろう)」


寂しそうに、澄んだ目をしてる。


寂しさをかき集めたような、目をしてる。


「ごめん、陽妃」


と目を反らし、悠真がうつむく。


じーわじわ。


うんざりするくらいの蝉の鳴き声が、頭痛のように頭に響く。


「もう……いい」


ここまで真っ直ぐな態度をされると、もう、何で頭に血がのぼっていたのか。


ばかばかしくなった。


「悠真って、真っ直ぐ過ぎて、めんどくさい男」


「……え?」


ゆっくりと頭を上げた悠真と目が合う。


「あ」


右から、1羽。


「はっさ」


左から、1羽。


羽毛のように真っ白な2羽の蝶々があたしと悠真を隔てた空間でくるくるじゃれあうように旋回したあと、ふわふわと飛んで行った。


「悠真。あたしお腹へった」


フフ、と吹き出すと、


「わんもやさ。行こうかね」


悠真は左耳のピアスを輝かせてくすぐったそうに笑った。


笑う悠真越しから降る水銀みたいなギラギラの陽射しに、あたしは慎重に目を細めた。


そんな悠真の過去を知ったのは、美味しいソーキそばを食べて雑貨屋を何件か回ったあとで。


西日がオレンジがかった夕方のフェリーのデッキで、並んでベンチに座り、サンセット間近の揺れる水面を眺めていた時だった。













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