恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「帰ぇーったら、そいつに会いに行きなっさー。そいつの話、聞いてやれぇ」


「でもっ、口きかなくなってもう何日も経っちゃってるの。今更……」


どんな顔をして、海斗に会いに行けばいいっていうんだろう。


要らないプライドが邪魔をする。


「なんくるない。絶対、なんくるないからさ」


なんくるないって、どうにかなるって意味だ。
 

「なんでそう思うの? なんでそう言い切れんの?」


「そいつやぁこの島に居るんやっさーろ? 生きちょるんだばぁ?」


「へ? そりゃあ、生きてるけど」


「なら、なんくるないからさ。遅くねーらん。まだまだなんぼでも間に合うからさぁ」


遅くねーらん、ともう一度繰り返して、


「うりー、はーれー(ほら、行け)。へーく帰ぇーって話聞いてやりなっさー」


悠真があたしをバスの中へ押し込める。


「えっ、ちょっと待ってよ」


振り向くと、悠真はバスから一歩離れ、じゃと右手を上げた。


「ツンツンさんけーよ。トゲトゲさんけーよ。短気や損気さ。いいことなんてひとつもねーらんからね。話、聞いてやりなっさー」


「でも、悠真」


「陽妃よー」


と悠真が赤いピアスにそっと触れながら言った。


「後悔の先にあんのや、後悔やっさーから。ちゃんと話さんとダメだしよ」


そして、ドアが閉まる直前だった。


「かんなじ(必ず)分かり合えるよ。陽妃」


ちばりよー、そう言って悠真は笑った。


人懐っこくて、屈託がなくて。


まるで燦燦と降り注ぐ陽射しみたいな笑顔だった。


ドアが閉まり、バスが走り出す。


バスはゆっくりと加速し、ターミナルのバス停から離れて行く。

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