恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~
「今日、転校の手続きをしてきたから」


「へえ……えええっ!」


びっくりした拍子に、フローリングに機種変更したばかりのスマートフォンを落としてしまった。


だらしなく寝転がっていたソファーから飛び跳ねるように起きると、


「ほら、これ、沖縄の高校のパンフレット。島から通えるとこ何校かあるから、目を通しておいて。陽妃が行きたい高校を選んで」


と2、3枚のパンフレットをあたしに差し伸べながら、お父さんが爽やかに微笑む。


「新学期に間に合うように、夏休みに入ったらすぐに島へ行けるように、今の高校には手続きしたから」


嘘でしょ……。


与那星島って……転校って……。


「ちょっ、ちょっと待ってよ」


パンフレットをむしり取るように奪って、あたしは立ち上がった。


「勝手に手続きしちゃったの? なんで?」


「え?」


お父さんがキョトンと目を点にして、あたしを見つめてくる。


「なに言ってるの、陽妃。うん、って昨日承諾してくれたじゃないか」


「……」


しばらく考えて、


「ああああ……」


しまったあー、と頭を抱える。


承諾した記憶はまったくないけど。


お父さんの話を適当に聞き流して、適当に相づちを返した覚えが、ある。


確実に、ある。


「まさか、陽妃がすんなり承諾してくれるとは思っていなかったから、父さん本当に嬉しいよ」
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