泣き顔にサヨナラのキス
原口係長は、そんなあたしを呆れたように見て、そして笑った。
「簡単に言えば、俺が愛していないことに彼女が気付いたってことかな」
淡々と紡ぎ出される言葉は穏やかで、そして少しの寂しさが滲んでいるみたい。
「彼女とは友達の紹介で知り合って、なんとなく付き合って2年。
ある時、彼女が結婚したいと言った。彼女には何の不満もないし。だから、結婚をすることにした。
俺はその時、結婚なんて誰としても同じだろうと想っていたんだよ」
タバコに火を点け、煙を吐き出していく。
それは、少しの後悔と一緒にゆらゆらと薄くなって消えていくように見えて。