泣き顔にサヨナラのキス
緊張からか指先が震えて冷たくなっていく。
意を決して、孝太を見詰めた。
「あたし、原口係長とキスしたことがあるの。
きっと、好きだった」
そうだ。あたしは好きだったんだ。少なからずとも、気持ちは揺れていて。
あの時、孝太のキスマークが無かったら、どうなっていたのか自分でもわからない。
「ね、カナ。そんな話を聞いて俺がカナを赦せると想う?」
言葉とは裏腹に孝太の声が優しくて戸惑ってしまう。
「あの、ごめんなさい」
それしか、言えない。
「俺はカナが好き。変わらずにね」
「……うん」
「だけど、赦せないよ」