泣き顔にサヨナラのキス
「けんちゃん?どうしたの、物思いに耽ったりして」
「あっ?いや、別に……」
どうして、亜美の事を思い出したりしたのだろう。
「野上さんのこと?」
隣の席に視線を移すと、飲みかけの焼酎のグラスが置いたままになっていた。
「別に、あいつのことなんて」
「好きだったくせに」
「まぁな」……そうだ。好きだった。
「どうして、恋人から奪わなかったの?」
「社内で、しかも同じ部署で揉めたくないだろ。面倒臭い。それに……」