泣き顔にサヨナラのキス
わかっていたんだ。もし奪ったとしてもそれは一時的なもので、あいつは俺から離れていくと。
怖かった。傷つく事が何よりも。あいつの温もりを知った後でそれを失うぐらいなら。
最初から知らないほうがマシだと想った。
「けんちゃんって、意外とヘタレなのね」
「幻滅したか?」
「うん」ふふふと柔らかく涼子が笑った。
黒髪が似合あう百合の花のような美女。涼子は初めて真剣に好きになった女。
あの頃は、想いを伝えることが出来なかった。
地元を離れて進学する事が決まっていた俺は、涼子を思い出にする事を選んだ。