泣き顔にサヨナラのキス

 
「何処に行くんですか?」


タクシーに乗り込んで、そう訊ねると「ん?」得意気に微笑む原口係長。


それから、15分程車を走らせて辿り着いたのは、一軒の料亭のような小料理屋。


落ち着いた佇まいの店構えに居酒屋ばかりに行っているあたしは、なんだか気後れしてしまう。


引き戸を開けると、玉砂利を敷き詰めた小路に風情がある間接照明。


橙の灯りが独特の雰囲気を醸し出していた。



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