泣き顔にサヨナラのキス
もしかしたら、なんて……
そんな淡い期待は、持ちたくないから。
「どうして、彼女を帰したりするんですか?喧嘩になっても知りませんよ」
「……やっぱり、そうきたか」
原口係長はクックッと声を圧し殺して笑った。
それから、あたしを抱き留めている腕の力を弱めると、二人の間に程よい空間が出来た。
ふと顔を上げると笑っている原口係長が見えて。
そして、待ち構えていたかのように唇にキスが落ちてきた。
「えっ!?」
チュと小さくリップ音を立てて繰り返されるそれに、次第にガチガチに固まっていた心が解れていって。
気がつけば、原口係長の背中に腕をまわしてしがみついていた。