泣き顔にサヨナラのキス
 


……え?

あたしには原口係長が考えていることが何一つわからない。

目の前の黒い瞳を見詰めてみても、その心の中は見えてこないから。


「だ、誰とでもいいじゃないですかっ。
原口係長だって、デートしていたわけだし。

それに、あたしは原口係長の彼女じゃない……」

自分が発した言葉に泣きそうになって俯いた。


「お前な、彼女じゃないなら、なんのつもりで俺に抱かれていたんだ?」

少しだけ優しくて、諭すような言い方にじわりと涙が滲んだ。


……それって?


「だって、今まで何も言ってくれなかった……」

あたしが欲しい言葉は、何一つ原口係長から聞いたことはなかった。

『好き』と言えば『知ってる』と返ってくるだけ。

だから、あたしはてっきり……



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