ドラマチックスイートハート
隣の椅子に座ると、恋人に少しでも安堵感を与える為にキュッと手を握る。
「聞いたよ全部……犯人は覚せい剤を使用した理性を失った人。私は鈍器で殴られた……」
黙ってコウは聞いている。
「でもね……」
一呼吸置いて、由奈は口に出した。
「覚えてないの。何もかも。私が何でここに居るのかも、未だに不思議でしょうがない。両親が亡くなった事も、実感が湧かない……」
段々と、その手は震えてくる。
「だけど……これが事実なんだよね……? 私……独りきりになっちゃったんだよね?」
それを皮切りに、今まで顔を崩さなかった彼女から、ポロポロと涙が零れ落ちた。
そんな姿を目の当たりにしたコウ。
彼の行動は……
ガバッ!!!!
今朝と同じ様に、由奈を抱き締めた。
今度は、彼女の怪我も忘れてしまう程、乱暴に強く。
「由奈は独りなんかじゃない!! 俺が、俺が側にいる!! だから、だから……!!」
それを聞いた由奈は、子供のように泣きじゃくった。
「コウゥゥ!!! ウワーン!!」
…………
「はいカット!!」
迫真の演技が撮れ、羽場監督も一発OKを出した。
これが、五年前の2人の真実の場面だ