ドラマチックスイートハート
「お疲れさん。
今日はここまでだよ」
デュレクターが声をかけ、石垣を緊張から解き放った。
「え……? あ、ハイ」
まだ少し、頭がボーっとしたままの石垣は、気の抜けた返事をした。
相当演技に、精根使い果たしたのであろう。
惚けるのも、無理のない話である。
そそくさと、帰りの準備をして、スタッフや監督に一言お礼を告げた。
まずは好調な滑り出しと、捉えてもいいであろう。
だが、うまく行き過ぎて逆に怖い。
こういう時、大抵何かの壁にぶつかるもんだ。
その不安が拭いきれないまま、スタジオを後にする。
不安は顔に残る。
「……!」
途中、天崎優が控え室から出て来て、バッチリと目があった。
「…あ……お疲れ様です」
つい、敬語に戻ってしまった。
しかし、そんな事を気にせず、天崎は別の意識にあった。
ジー……
こちらに近付いて来ると、顔を鑑定するかのように様々な角度からジロジロと見てきた。
「な、なんスか……?」
石垣が躊躇いながら言うと、表情軽く返された。
「おかしい」
……何が?
意味も分からず、再び問い詰めた