ドラマチックスイートハート
「おかしいとは一体……?」
「……コウ。変だわ。
普通あれだけ上手く演技したら、満悦な顔で帰るのに、今のコウは絶望な顔してる……
帰る顔、違うんじゃない?」
……成る程。
鏡がないので分からなかったが、今の自分は相当疲弊しているらしい。
その相手の様子から、自身の疲労の重度が手に取るように分かる。
「まあね……上手くいき過ぎるのも、逆に不安ってヤツだよ。あんな有名人達を相手にさ」
理由を言うと、天崎は「ん~っ」と考え出した。
そして閃く。
「じゃあ、今日は私が付き合ってあげるわ! お勧めの店連れて行ってあげるから行かない?」
「え!?」
声が裏返る。
冗談で言ってるのか、はたまた役をマネて言っているのか?
あの天下の大女優天崎優が、こんな一般人と食事!!?
天地がひっくり返っても有り得ないとは、まさにこの事。
石垣の不安な顔も吹き飛ぶ程、度肝を抜かされた。
「ん? このあと何か用事があるの?」
「い、い、い、いや! 滅相もございません! 喜んでお供…」
焦り過ぎて出た、過度の敬語に対して天崎はキッと睨むように威圧した。
流石にこれは、見過ごさなかったようだ。
「……イコウカ……ユナ」
慌てて訂正したが、どうもカタコト語になってしまった。
「うん♪」
天崎は嬉しそうにし、先頭に立ち歩き出した