ドラマチックスイートハート
同じ店でも、少し雰囲気の違う個室。
広い空間の、寛げる場所へ案内された。
「あ……の……。由奈。
さっきのユウ坊ってのは……?」
「ん? 私の名前よ。
この店は小さい頃から知っている店でね……あのおじさんとは付き合いが長いのよ」
意外である。
大女優が、こんな店との繋がりがあるなんて事は……
「おじさんって、親戚か何かじゃないんだ?」
「うん。全くの赤の他人よ。
小学校くらいだったかなぁ……いい匂いがするから、この店の前に立ってたら、あのおじさんが焼き鳥くれたの。
その頃からユウ坊って呼ばれて、可愛がってもらったんだから」
そんな天崎の少女時代話。
通常は、天崎優の血縁の関連がある店なら話題にもなり、一般人に見つかる可能性もある。
しかし、今言った事ならば彼女本人と店主しか知らない為、マスコミの魔の手からも回避できる。
よもや、この様な所に大女優がいるとは思わない、逆手に取った方法だ。
「お待ちぃ!」
注文もしてないのに、勝手に食べ物と天崎の分の飲み物だけ運ばれてきた。
「そっちの兄ちゃんは、何飲むい?」
「あっ……じゃあ、ビールで」
それを言うと、予め用意していたのかと思う程、すぐさま注いで持ってきてくれた店主。
何ともまあ、対応の早いことだ。
「ごゆっくり!」
それだけ言われ、直ぐにまた天崎と2人きりになる。
「ふふ……じゃあ、乾杯しよっか?」
「あ、ああ。乾杯っ」
互いにグラスを当て、天崎に焼き鳥などと似付かわしくない飲み会がスタートした