ドラマチックスイートハート

それ以来、石垣の仕事は順調だった。




特に負い目も感じず、出来るだけ自然体に近い体勢を維持していた。











今もこうして、演技に集中している。












「コウ。私あれから5年経つの。真実に向き合わなきゃいけないと思う」










いつもの部屋で、由奈から真面目な言葉がコウに向け発せられた。









付き合ってもう7年……未だ不思議と結婚の話はされないが、そろそろいい時期を迎えている。










2人が結婚する時に、両親に報告する為、記憶の扉を開けて全て背負ってコウと生きていきたいと言うのが、彼女の意志だ。











しかし、コウはそれに反対した。










「駄目だ。……せっかく傷も癒えてきたのに、由奈がそれを掘り返す事じゃないよ」











それを言われても、由奈は引き下がる考えを持ち合わせてなかった。










それのきっかけとなる事を、由奈は説明をしだした。











「昨日ね……両親の墓参りしていたら、知らない女性に声かけられたの。いきなり『事件の真相を知りたくない?』って……」










「女性?」











「うん……カールを巻いている私と同じくらいの女性で、墓場には似合わないヒールにエルメスのサングラスしてたけど」










「……!」











それを聞き、コウは何かピンと来たようだが、由奈にその顔は見せなかった
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