ドラマチックスイートハート
「いえ……そうは言っても年齢も仕事上でも先輩ですし……」
石垣はキャラにのまれないように、自分を保った。
……が彼女の喋り方や声のトーンを聞いていると、どうも調子が狂ってしまう。
「もう康クン~~女の子に歳の話は触れないのっ。ネ♪? 今日の演技も良かったよ~~? 才能ある~~♪」
と言うか、さっきから言われてるが、いつの間にか『康クン』?
石垣本人でさえ気付かない程、非常にスムーズに名前を呼ばれ、違和感も感じないくらいに慣れ親しんでいる。
彼からしても、心を開けるような親近感を感じているだろう。
「ハハ。ありがとうございます」
「でも、もう少しあのシーン6のとこの演技は、自分の感情を強く前に出していいよ? あれじゃあ、テレビ見てる人は分かりにくいからさ」
……!
今まで自分の演技に、口を出された事がなかった石垣。
初めての体験に戸惑いを見せるが、寧ろ喜びの感情が芽生えた。
ダメ出しされた方が、まだリアリティがある。
今まではうまく行き過ぎた為、素直に喜べなかったからだ。
「はい!頑張ります!」
自然と出た満面の笑みを浮かべ、元気よく答えると、それを見た佐々木は一つ頷いた。
「うん♪やっと出たね君の本当の顔。それが出来れば合格だよ」
そう言い残して、彼女はロケバスに戻って行った