月luna~眠れる王子と最後のキスを・・・~

「まだ怖い・・・」


『・・・』

『行こう、春・・・』

 伸ばされた手をつかんで、私は美香と一緒に晃さんのいる病院に向かった・・・。


 だけど、今まで遠いと思っていたその病院には、心の準備が出来ないほど速くついてしまって、晃さんの部屋にもナースに聞いてすぐにたどり着いた。


 だから私は少しの間、目の前にあるその部屋のドアと睨み合っていた・・・。


『大丈夫?』

 だけどそんな私の背中を心配そうな美香の声が押す。

 私はもう一人じゃない。


「・・・」

「行こう・・・」

 不安でしかたなかった・・・。

 だから大丈夫とは言えなかったけど、今度は私が美香を引っ張って、私達はその部屋に入っていった。



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