無邪気な欲望


段差の低い階段をゆっくり上がっているのが足音でわかる。


耳と感覚だけでも、どの辺りにいるのかは容易に察する事が出来た。


――――ん?


変だな。


先輩がまっすぐこっちに向かって来てる気がする。


足音がすぐ近くで聞こえてる。


気のせいかな?


この辺りには私以外、誰もいないと思うんだけど……。



「ち~ま」



「!?」



気のせいなんかじゃなかった!!


雑賀先輩はいつの間にか机の脇でしゃがみ込み、隠れている私をじっと見つめていた。



「ほら、出といで~」



にっこりと優しげな微笑みが逆に怪しさを醸し出している。


私は声には出さないけど、首を横に振り、必死で拒絶した。
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