無邪気な欲望
「彼女に遠慮なんてしなくていいよ? お前との約束が先だったんだし」
ワケのわからない事を言っている先輩に、ブンブンとすごい勢いで首を振る。
先に約束なんてした覚えもないし、出ていく気もないし。
いろんな意味の否定を、精一杯態度で示した。
だけど先輩は私の意思をくみ取らず、私の腕を掴んで……。
「いい子だから、言う事聞きな?」
女生徒には聞こえないよう小さな声で言い捨てて、私を強引に引っ張り出してしまった。
「よっ……と」
机の下から出てきた私を立たせ、くるりと女生徒の方に向き直らせると、これ見よがしに肩を抱き、得意げな笑みを浮かべた。
「なっ! ホントだろ?」
あまりに勝手で意味不明な先輩の行動に、呆然と立ち尽くしているだけで、言葉も出なければ、反発する事も出来なかった。