無邪気な欲望


女生徒の方も、まさか本気で『先約』が現れるなんて思ってなかったみたいで、驚きを隠せず、言葉を失っている。



「と、いうワケで。コイツいるから今日はダ~メ」



私達2人を置いてけぼりにして、妙に明るい声色が教室内に響いた。


にこやかに言葉を発した先輩は、私から離れて足早に女生徒に近づいていく。



「諦めて、帰ってね~」



「えっ、ちょっ!?」



強引に背中を押して、出入口のほうに追いやったかと思うと、無理やり視聴覚教室から放り出してしまった。


その上、自分の背中でドアを押し付けて、中に戻って来れないようにしてる。


室内から強制的に退場させられた女生徒は、ドアを叩きながら少しの間だけ悪態をついてたけど、扉が開かないことにはどうしようもないから、すぐにどこかへ行ってしまったようだ。


自分から『相手を連れて来たら諦める』と言った手前もあったからかな?


意外と諦めが早くて拍子抜けだけど……。

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