無邪気な欲望


ドアの向こう側から人の気配が消えた事を確認した雑賀先輩は、乱暴に頭を掻きながら戻ってきた。



「はぁ~~~~。や~っと解放された~~」



大きなため息を付きながら最前列の机に腰を下ろす。


呆気に取られてぼ~っと眺めてたけど、次第に怒りが込み上げてきた私は、階段を駆け下り、先輩の前に回り込んで激しく抗議した。



「雑賀先輩!! どうしてあんな事言ったんですか?」



「何が?」



「私が先約って……、そんな約束した覚えないです!!」



「うん。オレもない」



罪の意識も何もない、晴れやかな表情で平然と自分の嘘を認める。


私はわざとらしく大げさに項垂れた。



「だったらなんで……」



「だって一番手っ取り早いじゃん?」



「は!?」
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